2.演奏技術
(1)作曲者の意図を読み取る

 前回、『奏者は作曲者の意図を読み取る力とそれを
 表現する技術が必要』だと述べた。
 プロの奏者は皆必ずこれらを身に付けている。

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 Q.いきなりだが、ここで問題である。
   では、『作曲者の意図を読み取ること』と
   『それを表現すること』では一体どちらが
   難しいのだろうか?
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 当然これを読んでいる方々にはある程度の楽器経験
 があるだろう。しかし、『作曲者の意図を読み取る』
 経験がある方は少ないのではないか。
 人は経験の無いことに対しては非常に難しく考える
 ものである。

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 A.意外にも答えは
   『表現することの方が断然難しい』
   である。
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 何故ならば、ある程度の作曲者の意図は既に楽譜上に
 書かれているからである。
 よって、一から全てを考なければならない必要は
 まるで無い。
 但し、当然楽譜に書かれていない部分も少なからず
 ある。今回はこれらについて説明する。

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 楽譜は書店などで売っている本と同じである。
 作曲者や著者の書きたいことがそこに書かれている。

 楽譜と本の違う点は、本はそれを読む人が対象である
 ことに対し、楽譜は楽譜を読む人が対象ではなく、
 その楽譜に従って演奏された音楽を聴く人が対象で
 あるということ。
 つまり、「聴者」は楽譜だけを見せられてもその曲を
 頭の中に思い浮かべることが出来ないため、必ず
 「奏者」を仲介することになる。

 本の場合、それを読者が読みながらにしてその時々の
 場面を自然と頭の中に思い浮かべることが出来る。
 その時点で、著者の意図は読者に伝わっている、
 あるいは、読者は著者の意図を読み取っていると
 言って良いだろう。
 しかし、本の場合にも例外がある。
 他人に読んで聞かせる場合、いわゆる音読や朗読が
 それにあたる。

 本を音読する場合、全くの棒読みでは味気無い。
 そこで、場面の臨場感や登場人物の心状を文章から
 読み取り、それを聴者に伝えるために抑揚を付けて
 読む必要が出てくる。いわゆる「感情を込めて読む」
 ということである。
 しかし、多くの人は既に日常会話の中でもある程度
 知らず知らずのうちにそれらの術が身に付いている
 ため、実はさほど困難なことではない。
 例えば、主人公が死んでしまうような場面では、
 声高らかに嬉々として読む人はいない。当然ながら
 物悲しげに読む筈だ。

 楽譜を演奏するということは本を音読することと
 同じだと考えて欲しい。
 棒弾きでは非常に味気無い。そのため奏者が作曲者の
 意図を読み取り、それを演奏で表現する必要がある。

 そこで楽譜を良く見て頂きたい。何度も言うが実は
 楽譜の中には既にある程度の作曲者の意図が書かれて
 いるのだ。
 [f][p]といった強弱記号や、[dolce][espressivo]と
 いった表現記号がそれであり、これにより作曲者の
 意図やその表現の仕方、いわゆる抑揚の付け方が
 奏者にも伝わるようになっている。

 と言うよりも、そのための楽譜なのである。
 作曲者が自分の意図を聴者に伝えるためには奏者を
 介さなければならないことを当然知っている。
 作曲者が、その仲介者である奏者の理解出来ない
 ような楽譜を書く筈がない。

 よって、奏者が楽譜から作曲者の意図を読み取る
 『読解力』に欠けていたとしても、楽譜に従って
 演奏しさえすれば大きな間違いにはならない。

 しかしながら、書かれている内容が作曲者の意図の
 全てではない。
 例えば[p]とだけ書かれている旋律があった場合、
 奏者は、ただ消えそうに弱々しく演奏すべきなのか、
 音の輪郭は明瞭にして音量のみ小さくすべきなのか、
 などを考える必要がある。

 そこで奏者は、楽譜に書かれている音符や記号を
 頼りにしながら楽譜に現れていない作曲者の意図を
 読み取っていく訳であるが、それが出来るようになる
 ためにはある程度の知識や経験が要求される。
 
 経験の少ない間は、とにかく作曲者の意図を崩ぬよう
  『楽譜通りに演奏することを心掛ける』
 のが良い。
 それでも幾ばくかの表現は十分可能であり、もしも
 表現の足りない部分や間違っている部分があったと
 しても、「それを指摘すべき者」は別に存在する
 からだ。



 でもDJは楽譜通りに吹いたこと無いけどね。
 (↑説得力ねーな。)



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 【今回の要点】
  ○『楽譜には既に作曲者の意図が書かれている』。
   但し、楽譜に書かれていることが作曲者の意図の
   全てではないことに注意する。
  ○作曲者の意図を読み取ることとそれを表現する
   ことでは、
   『表現することの方が断然難しい』
  ○奏者の経験が少ない間は、とにかく
   『楽譜通りに演奏することを心掛ける』。
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